お知らせ

2011/06/10

大規模災害時の暫間的有床義歯製作法

  この度の東日本大震災に関しまして被害にあわれた皆様に謹んでお見舞いを申し上げます

  被災地においては逸早く復旧、復興が望まれるところですが、発災後の混乱により義歯を紛失されたり、環境の変化により咀嚼に困難をきたす被災者が数多く現れ、その結果嚥下障害に陥る高齢者が増加するという報告がみられます。

  今回、岡山大学歯学部有床義歯補綴学分野 皆木省吾教授の下で「大規模災害時の暫間的有床義歯製作法」の研究発表がされ、日本歯科医師会雑誌2011年3月号に掲載されました。本会ホームページにても会員の皆様にご紹介をして、被災地での救援歯科活動への一助となればと思い掲載をいたしました。

災害時における地域歯科診療活動の根本概念について

  大規模災害時においては発災の時間帯や規模により大勢の方が被災され,その被災された方の中には義歯を紛失される方,著しい環境の変化により咀嚼に困難をきたす方が大勢現れることが阪神淡路大震災の報告書においても指摘されている。大規模災害時の歯科的治療の要点としては、
    1)災害の種類に適した救援内容の早期決定
    2)上記内容を時間経過に従って、再評価しつつ救援内容を更新すること
    3)各救援内容別に、被災時診療の手順を確立しておくこと
などが必要と考えられる。

  特に上記の救援内容については、被災地以外からの外部の救援に関する理念の形成ならびに、被災地の地元医療機関としての歯科的救援治療に関する理念の形成が必要と考えられる。
基本的には、長期あるいは永続性のある歯科的治療に関しては地元の医療機関の手にゆだねるしかあり得ないので、この地元医療機関の復旧ならびに復興のプロセスをこの理念に含めておく必要がある。この理念については、災害時でなく平常時の地域医療機関において十分な検討を常に行う姿勢が重要であると考えられる。

  本稿においては、これらの理念の重要性とは別に、上記3)に掲げた被災時診療の手順についてのマニュアルあるいは実施ガイドといった観点から作成を行うものである。このような治療手順の確立には、必要とされる物資の確保、供給にいたるまで想定に入れて作成することが必要と考えられる。

  さらには、被災地に機関病院施設が存在する地域における災害時歯科医療と、存在しない地域における災害時歯科医療とはその特徴には当然違いがあると考えられる。
もちろん、それらの医療機関そのものがどのような被災を被るかによってもその後のプランはことなるものであることは言うまでもない。それぞれの担うべき役割についても、被災の種類ならびにレベルを種々具体的に想定してそれらの組織で平常時に検討を進めておく必要があるかもしれない。

  本稿で対象とする災害時義歯作成については、災害時歯科医療における一つのツールとしての単なる製作手順を示すものである。
これは被災初期に迅速かつ多数の被災者に対して供給可能であることを示す一つの手順であるが、一つ一つの治療についてはこのような単純化された提示としかなりえないが、これらもその行い方によっては地域の患者の長期経過を本来のかかりつけ歯科医が責任をもって見る機会の多寡にも影響をあたえると考えられ、その救援に関する理念を各地域によって形成することの重要性があらためて強調されるべき内容であると考えられる。
早期に各地域においてこのような理念形成の活動が進むことを願う。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 咬合・有床義歯補綴学分野 皆木省吾教授
岡山県歯科医師会

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